Columns

ヘイル・メアリーと相対性理論

アンディ・ウィアーによるSF小説『プロジェクト・ヘイル・メアリー(PHM)』はとにかくすごい。ウィアーによる『火星の人』(映画『オデッセイ』の原作小説)も良かったが、PHMには、もっと科学好きを夢中にさせるものがある。破滅に向かう地球を救うべく奮闘するストーリーはよくあるが、人工冬眠のために記憶を失った状態から始まるという、主人公と一緒に謎解きをしているような楽しみ方さえできるのだ。そして、さまざまな科学的挑戦を克服してゆくなかで、別星系からやってきた「異星人」と遭遇する。

終盤を迎えた『チ。』と2008年のベネディクト16世

15世紀ヨーロッパを舞台に、禁じられた地動説を命がけで研究し時代を繋いできた人達を描いたフィクション漫画『チ。-地球の運動について-』(ビッグコミックスピリッツで連載、作者は魚豊)が新鮮な驚きをシーンに巻き起こしたのは少し前のこと。その後アニメ化され、サカナクションによる未完の主題歌も話題となりながら、「何度でも〜」とサカナクション山口氏の歌声に彩られながら、『チ。-地球の運動について-』もとうとうクライマックスへと突入している(具体的には第6集デュラカの活版印刷あたりなので、後一巻というところか)。

才能が噴火する「アフター・ピナツボ」という視点

2025年4月5日より、フィリピン映画シーンの最先端をゆく時代の寵児ティミー・ハーンによる長編劇映画『ウリリは黒魔術の夢をみた』が、世界的パンデミックで上映が危ぶまれた中、満を持して日本初上陸する。

2025年1月20日トランプ大統領誕生の日に。

就任前夜「あすの日が暮れるころには、国境を閉ざす」そして「トランスジェンダーの狂気を終わらせる」と叫んだドナルド・ジョン・トランプ78歳。この言葉を聞くだけだとショーヴィニズムとパトリオティズムに染められているだけかと思いきや、「TikTokが好きだ」と明言し、禁止令から1日足らずでサービス復帰させるほどユースカルチャーにも影響力を誇る。

グッバイ矢野さん 映画愛のDNAは続いてゆく

2025年1月、前年に亡くなった山形国際ドキュメンタリー映画祭(以下、YIDFF)を創立した矢野和之さんのお別れの会「グッバイ矢野さん 矢野和之さんお別れの会」が東京の内幸町で行われた。

8年目を迎えたドキュメンタリーのin vivo 実験室《ドキュメメント》

「ドキュメンタリー」と「メメント・モリ(死を想え)」とつなぎ合わせたら何が生まれるだろう?という発想のもとに少し強引な造語「ドキュ・メメント」を考えたのが8年前。それ以来、気鋭のドキュメンタリストたちが大切にと立てている作品を持ち寄り議論する場として成長を続けてきている。