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嵐のなかで立ち続ける者は、踊っているように見えるのだろうか?

「GENER8ION: STORM STARRING YUNG LEAN [MV]」

セリフが、一度もない。七分半のあいだ、誰ひとり口をきかない。聞こえるのは、床を蹴る音、ガラスが割れる音、そして地鳴りのようなビートだけ。ネクタイをゆるめた制服姿の少年たちが廊下を走り、殴り合い、校舎そのものを壊してゆく…。観ているこちらの呼吸が、いつのまにか浅くなっている。そして最後の二分——彼らは、踊りはじめる。暴力と群舞が、圧倒的共鳴と圧倒的「個」の力。それが「GENER8ION: STORM」というルール。

「GENER8ION: STORM STARRING YUNG LEAN [MV]」(2026/フランス)は、GENER8ION —— フランスのプロデューサー Surkin と映像作家 Romain Gavras によるユニット —— が2026年4月に放った二部構成のシングルの映像版。舞台は2034年のイギリスの全寮制男子校。大人は一人も出てこない。MUBIには”Giving Britain’s gritty schoolyards a bracing sci-fi makeover”(イギリスのすさんだ校庭に、SF的な改装をほどこす)と書かれている。主演は Yung Lean、本名 Jonatan Leandoer。ミンスクに生まれ、ストックホルムのセーデルマルムで育ち、2013年に 「Ginseng Strip 2002」 がYouTubeで爆発した、あの “Sad Boys” の少年だ。ウェブカメラの中で泣きそうな顔をしていた彼が、ここでは校内を支配する暴君として、ひたすら身体で存在している。

Art by Daisuke Nishimura

Gavras自身はパリの映像集団 Kourtrajmé 出身で、M.I.A.「Born Free」、「Bad Girls」、Jay-Z & Kanye West「No Church in the Wild」、Jamie xx「Gosh」——暴動と群衆を撮らせたら右に出る者がいない。2012年にはMTV VMAのBest Directionを獲り、2022年の長編 「Athena」 はヴェネチアで金獅子賞を争った。そして忘れてはいけないのが振付だ。この映像の群舞をつくったのは Damien Jalet。ルカ・グァダニーノ版 「サスペリア」(2018) で、魔女たちの呪文を”踊り”として設計した才能。

マスゲームとも、組体操とも違う。マスゲームは、上から与えられた設計図に一人ひとりが従うことで巨大な絵をつくる。組体操は、誰かの肩に乗り、互いに支え合うことで形をつくる。どちらも、言ってみればぶつからないための技術だ。ところがこの少年たちは、ぶつかることで形が生まれる。肩と肩が衝突し、誰かが突き飛ばされ、その反動がまた別の誰かを押し出す。その連鎖が、気づけばひとつのうねりになっている。誰が設計したのかわからない流れが、こちらの想像を何歩も先回りしていく。Jaletが「サスペリア」で魔女たちの身体に仕込んだ”呪いとしての振付”が、ここでは衝突そのものを素材にして組み上げられている。

水が氷になるように、暴動が儀式になり、最後に立ち上がるのは、圧倒的な調和だ。ただ、それなのに、その調和のただなかで、ひとつの「個」だけが不敵に光っている。Yung Leanは群れに溶けない。周りがそろえばそろうほど、彼の立ち姿の異物感はむしろ強くなっていく。調和が完璧であるほど、個はより強く見える。この逆説こそが、この七分半を単なるアート表現の外側へ押し出し、観る者の胸ぐらをつかむ。

2034年の校庭で、大人が一人もいない場所で、嵐の少年たち(GENERATION: STORM)は自ら壊し、踊ることを選んだ。七分半の嵐が去った後に残るのは、新しい世界の足音かもしれない。