text by Daisuke Nishimura

まるで現在に蘇ったアウグスト・ザンダーのように、働く人やドラマチックな表情をした人たちを写し続けるフォトグラファー、Peter Hapak。フォトグラファーの家系に生まれたという彼にとって、写真とは自己表現の最もわかりやすい道具だったと言う。「友達がコンテンポラリーアートで活躍していたから、彼らのパフォーマンスをドキュメントすることから始めたんだ。彼らがアートを通して伝えようとしたことを、僕はずっと忘れたくないんだ!」つまり、彼はスタジオという環境下で、アーティストたちの世界を「再構成」していったのだ。
「撮影セッションで受け取る感情を、写真に翻訳してゆく。僕だってまだみたことのないものをみたいっていつも思っているし、それはとても実験的で楽しいプロセスなんだ」と語るピーター。

中でも印象的な、裸体で回転する男性を写した『TANK』やアフロアメリカンの女性を映し出した『Hair Wars』などについて、次の様に語ってくれた。「『TANK』は、僕らが生まれる前の子宮から発想を得た作品なんだ。この世界に産声を上げる前にいた、閉ざされた世界ではこんな姿勢でじっと待っていたはずさ。かたや『Hair wars』は、実際にデトロイトで毎年行われている美容師たちを撮影したシリーズなんだ。タイムズ誌のために撮影した作品なんだけどね」。彼の作品を見ていると、被写体とどのように距離をとりながら撮影しているのか、それが気になってくるはずだ。「ある程度の親しさが生まれることが、ポートレイトには大切。そこにカメラがあるということを被写体が忘れてくれたら、そこからさらに深い表現に入っていくことが出来る。つまり、写真家でありながら透明人間でもあるという、そこの線引きが難しいんだ」。
たしかに、彼の作品に登場するモデルをみていると、何か別のことを考えているような、そんな写真が多いのはそのおかげなんだろうか。「クリエイティビティは、人をつなげるし街もつながっていく。いつも新しい挑戦をして、新しい問題を見つけていく。だから、クリエイティビティそのものが僕らが使う『共通言語』であって、僕らが通ったあとには、その足跡がしっかりと刻まれていくのさ」。この先、ショートフィルムを製作する予定だと言うピーター。今日も、新しい被写体を求めてNYの街でカメラをぶら下げ歩いているに違いない。


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Peter Hapak:
NYを拠点に活躍するフォトグラファー。主にポートレイトを得意とし、イーサン・ホークやジュリー・デルピーを始めとする多くのセレブリティの写真でTIME誌の表紙を飾る売れっ子クリエイターである。
http://www.peterhapak.com